辻が花について

辻が花とは

絞り染め本来の美しさを最大限に生かした染色技法

辻が花による染色

「辻が花 (辻ヶ花)」とは何か、と聞かれても、残された資料も現存する小袖もあまりに少なく一概には言えませんが、定義としては「絞り染めを基調として、描き絵・摺箔・刺繍などを併用したもの」ということでいいでしょう。

辻が花の基本となる絞り染めは、奈良時代から日本に伝統的に続く手法です。布を結んだり括ったりして染めた初歩的で簡略なものから、絵模様の輪郭を縫い絞って多色に染め分けたものまで様々なものがあります。これは縫い絞った糸の圧力で染料が生地に入るのを防ぐ纐纈(こうけち)と呼ばれるものです。
具体的には、複雑な縫い締め絞り・竹皮絞りなどの高度な技法が使用されました。小さな模様の鹿の子絞りと呼ばれるものならば、糸で絞るだけでいいのですが、大きな模様のときは巻上げ絞り・竹皮絞りが使われ染め分けには桶絞りが使われました。
巻上げ絞りとは、色の入ってほしくないところをその名の通り、ぐるぐる巻きに巻き上げることによって防染するというもので、竹皮絞りとは、竹皮をかぶせ、裏に木や紙の芯を入れて防染するというものです。この竹皮は現在では使われず、使い勝手の良いビニールへと変化しました。桶絞りは、防染したい部分を桶に挟んで染まらないようにする方法です。

「辻が花」という名称は、15世紀後半に初めて文献上に現れます。1596年には豊臣秀吉が明国の使者へ、帰国時の餞別として辻が花を贈ったという記述もあります。辻が花は誕生からおよそ一世紀余りの間に、素朴な絞り染めから刺繍や摺箔を施した豪華なものまで各階層の人に広がり、同時に「辻が花」という名称も、今我々が着物といえばすぐに「友禅」と口にするように、身近な日常語となっていたようです。
桂女の小袖、秀吉の陣羽織、徳川家に残る着物などに見られるようにその最盛期は桃山~江戸時代初期でしたが、友禅染の発達等から辻が花はその存在意義を失い、自然に消滅へと向かったのです。

近年「幻の染め」としてマスコミなどでとりあげられ、「辻が花」の名が一般に知れ渡るようになりましたが、その図柄が単に辻が花模様として定着した感もあります。
しかし「辻が花」の基本はあくまで「絞り染め」です。そこに描き絵や箔・刺繍などを併用することで、絞り染め本来の美しさを最大限に生かした技法なのです。

更に詳しく 辻が花とは

絵絞りとは

安土桃山時代にはない、より細やかな絵模様を表す「絵絞り」

絵絞り

「辻が花」は絞り染めを主体に、様々な絵模様を表す技法です。
安土桃山時代の辻が花にも、藤やつつじはもちろん兎や貝・動物などが生き生きと表されています。
絵絞庵では「辻が花」を、絞り染めで絵模様を表す「絵絞り」であると解釈し、先人の技術を活かしながら、安土桃山時代にはないより絵画的な作品をお届けしています。 一般的な絞り染めのイメージは、巻上げ絞りや鹿の子絞り・匹田絞り・有松絞り等のような抽象的、幾何学的なものと思われますが、それらの技法では、絞りそのもので絵画的な柄を表すことはできません。
しかし絵絞庵の辻が花は、友禅染に近いレベルまでの絵画的な表現を可能にしました。

ですから、絵絞庵の辻が花は絵模様を絞り染めで表すことを可能とした技法、「絵絞り」であるといえるのです。

絵絞庵では、イメージを形にして図案を作り、染までの全ての工程を工房にて行っております。付け下げ等軽い柄のものから、訪問着、振袖まで、ご予算に応じたお誂えも可能です。
お誂えについて 詳しくはこちら

制作工程

辻が花の基本は絞り染めによる染め分けです。
つまり、絞りの圧力によって染料が入ることを防ぐ防染の繰り返しによって、色の違い・絵模様をあらわします。

絵絞り 工程表

【糸入れ】描いた下絵に沿って生地を糸で縫います。細かく縫うほど柄がきれいにあがります。縫ったところが色の境目になります。

【絞る】縫い締め絞り・傘絞り・巻上げ絞り・帽子絞り・逆帽子絞り、大きな染め分けには爆弾絞りや桶絞りを使います。全ての模様や色の違いは、一本一本糸を引っ張って絞り防染する事によって出来上がります。

【浸け染め】絞った生地を染料液の中に浸けます。この時あまり長時間浸けすぎると、絞った部分にまで染料が入ってしまいますし、短すぎるとほとんど染料が入りません。 違う色を染めるごとに絞りなおして、防染・浸染を繰り返します。

【解く】全ての色を染め終えたら糸をほどきます。糸をほどくまで、柄がどうなっているかは分かりません。生地を切らないように一本一本気をつけてほどきます。

【蒸し】色を定着させるため生地を蒸します。(天然染料等や高温で染めた場合は不要)

【水元】生地に残っている染料を水洗いで落とします。絵絞庵では地下水で洗っています。

【湯のし】縮んだ生地を元の状態に戻します。

【墨描き】墨描きを加えて完成です。

辻が花に用いる絞り染めは、あくまで絞りの圧力によって色を染め分ける染色技法ですから、絞りによる生地の立体感を目的としたものではなく、結果的に生地に立体感が残ります。

様々な「絞り」と呼ばれるものが存在しますが、絵絞庵では昔ながらの技法を受け継ぎ、発展させ、一つ一つ丁寧な仕事を心掛けています。

 

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